ヒスイです。
「自社のブランド名でメルカリを検索したら、作った覚えのない商品が並んでいる。ロゴは似ているけれど、パッケージの質感が明らかに違う。これは何なのか。誰が売っているのか。買った人が肌トラブルを起こしたら、自社のブランドのせいにされるのではないか」──いま、そんな状態でこの記事にたどり着いた方へ。
結論から言います。放置しないでください。
メルカリ・Amazon・楽天には、知的財産権侵害や模倣品の疑いがある出品について、権利者等が通報・申告できる公式の仕組みがあります。申告が認められれば、削除や掲載停止等の対応が取られる可能性があります。
この記事では、各プラットフォームの通報手順を「今日中に動ける」形で整理しています。そのうえで、通報の先に待っている現実と、それに対してどう備えるかについてもお伝えします。
コスメの偽物は、増えている
通報の手順に入る前に、「これは自分だけの問題なのか」という点だけ確認させてください。
偽物の化粧品に関する消費者トラブルは、ここ数年で目立っています。消費者庁は2024年3月に公表したコラムの中で、フリマサイトで購入した化粧品が模倣品(=本物に似せて作られた偽物)だったという事例を複数紹介しています。
「これまで正規取扱店で購入していた化粧水と同じ製品がフリマサイトに出品されており(中略)実際に使用してみると、塗布した所がヒリヒリ痛み赤くなった。不審に思い改めてパッケージを確認すると、品質保証のシールやデザインが普段購入するものと違っていた。」
出典:消費者庁「コラムVol.7 インターネットでの化粧品の購入は慎重に─模倣品などの可能性も─」(https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_safety/child/project_001/mail/20240328/)
同資料では、模倣品の製造や販売は知的財産権を侵害する違法行為であることにも触れられています。化粧品は肌に直接つけるものなので、模倣品による健康被害はブランドへの信頼を一瞬で壊しかねません。被害を受けた消費者が、本物のブランドに問い合わせてくることも珍しくありません。
つまり、放置すること自体がブランドにとってのリスクです。では、具体的にどう通報すればいいのかを見ていきます。
各プラットフォームへの通報手順
実務上、プラットフォームへの申告は、単に「偽物っぽい」と伝えるだけでなく、商標権・著作権・意匠権などの権利侵害、あるいは真正品ではないことを示す具体的な根拠とあわせて行うのが重要です。
メルカリで偽物を見つけた場合
メルカリでの対応は、大きく2段階あります。
- 通報したい商品を選択し、画面右上の「…」(3点リーダー)から「通報」をタップ
- 「この商品を事務局に報告する」を選択
- 報告理由を選択し、「事務局に報告する」をタップ
- 「商品の報告を受け付けました」と表示されれば完了
(出典:メルカリヘルプセンター「禁止されている出品物・行為を通報する」
https://help.jp.mercari.com/guide/articles/830/)
この方法は誰でもできますが、あくまで事務局への情報提供です。削除や掲載停止が必ず行われるわけではありません。
商標権などの知的財産権を持っている場合、メルカリの「知的財産権侵害の申立窓口」から正式に削除を申し立てることができます。
「知的財産権侵害が認められた場合は、出品物削除の対応を実施します。」
出典:メルカリ「知的財産権侵害の申立窓口」(https://about.mercari.com/contact/ipr-inquiry/)
窓口から申立書をダウンロードして提出し、必要に応じて、権利の証明資料や本人確認・権限確認資料の提出を求められます。ここで商標登録番号を持っていると、「登録第○○○号に基づく侵害です」と明確に主張でき、プラットフォーム側にも説明しやすくなります。
法人であれば、メルカリの「権利者保護プログラム」に加入することで、申立てごとの書類提出を簡略化でき、対応を進めやすくなります。
(出典:メルカリ「権利者保護プログラム」
https://about.mercari.com/safety/ip-protection-program/)
ただし、同プログラムの対象者は「知的財産権を所有する権利者(個人を除く)」とされているため、自然人名義で事業を行っている場合は、通常は一般窓口からの申立てが中心になると考えられます。
Amazonで偽物を見つけた場合
Amazonでの知的財産権侵害の申告は、Report Infringement のオンラインフォームから行います。
「知的財産権を侵害された場合は、オンラインフォームから申告してください。」
出典:Amazon.co.jp「知的財産権侵害についての申し立てとその手続き」(https://www.amazon.co.jp/gp/help/customer/display.html?nodeId=201995100)
報告フォーム:
https://www.amazon.co.jp/report/infringement
このフォームから報告できるのは、知的財産権の所有者またはその代理人です。なお、Amazonは公開ページ上で、権利者またはその代理人でない場合は処理できないことや、単なる流通経路の制限(いわゆる転売ルール違反など)までは知財侵害として扱わない場合があることも案内しています。
AmazonにはさらにBrand Registryという制度があります。ブランドオーナーが登録しておくと、侵害申告やモニタリングに関する保護ツールを利用でき、Amazonの自動検知・自動保護の仕組みの恩恵も受けやすくなります。
(出典:Amazon「Amazon Brand Registry」
https://sell.amazon.co.jp/brand-registry)
Brand Registryの利用には、少なくとも商標出願中または登録済みであることが求められます。現行案内では、登録商標だけでなく、一定の場合には出願中の商標でも登録対象となることがあります。詳細要件は国や商標の状態によって異なるため、最新の案内を確認してください。
楽天市場で偽物を見つけた場合
楽天市場では、「権利侵害通知窓口」から通報します。3社の中でも、権利資料の入力や添付資料の要求が比較的明確で、申告要件が厳格に設計されている印象です。
「以下の権利侵害に該当する商品を見つけた場合は、楽天市場 権利侵害通知窓口 へご報告ください。
出典:楽天市場「権利侵害に関する通知」(https://ichiba-smp.faq.rakuten.net/detail/000011383)
・商標権侵害
・著作権侵害
・意匠権侵害
・特許権侵害」
通知フォーム:
https://ichiba.faq.rakuten.net/form/rightsmanagement-post
商標権侵害の通報では、「日本国内で有効な商標登録番号」と「指定商品又は指定役務」が必須入力項目です。商標登録がなければ、商標権侵害としてのフォーム入力は先に進めません。
さらに、特許権や意匠権の侵害については、弁理士又は弁護士による権利侵害を証明する鑑定書の提出が求められています。
(出典:楽天市場「権利侵害通知窓口」フォーム内記載)
なお、楽天のフォームには、入力不備がある場合、権利者であることが不明確な場合、商流の問題(転売)に関する申請などでは対応できない場合がある旨も明記されています。
1つ消しても、また出てくる
ここまでの手順を実行すれば、目の前の模倣品について、削除や掲載停止等の対応につながる可能性があります。
ただ、知財の実務に関わる中で何度も見てきた光景があります。通報して1つ削除される。数日後にまた別のアカウントから同じような出品が現れる。また通報する。また現れる。その繰り返しです。
フリマアプリは誰でもアカウントを作れます。出品者を1人排除しても、同じ供給元から仕入れた別の出品者がすぐに現れることがあります。通報にかかる時間と手間はすべて権利者側に偏りやすく、事業が成長して模倣品が増えるほど、負担は膨らんでいきます。
では、このモグラ叩きから抜け出すには、何が必要なのか。
通報の先に必要な、3つの備え
備え1:商標登録を取得する
ここまで読んでお気づきかもしれませんが、メルカリ・Amazon・楽天のどこで申告するにしても、「商標登録番号を持っているかどうか」で話の進み方が大きく変わります。楽天では、少なくとも商標権侵害として申告するには、商標登録番号の入力が必須です。
商標登録があるということは、法的にも「やめてください」と言える根拠が明確になるということです。商標法第36条第1項は、こう規定しています。
「商標権者又は専用使用権者は、自己の商標権又は専用使用権を侵害する者又は侵害するおそれがある者に対し、その侵害の停止又は予防を請求することができる。」
出典:商標法第36条第1項(https://laws.e-gov.go.jp/law/334AC0000000127)
つまり、登録商標の効力が及ぶ態様で使用されている限り、プラットフォームへの申告だけでなく、模倣品の製造元や販売者に対して、直接、差止め等を求める法的根拠にもなります。
「でも商標登録って時間がかかるのでは」と思われるかもしれません。特許庁が公表している令和8年4月時点の審査着手状況によると、化粧品が属する第3類(化学審査室担当)は、出願から審査着手まで約5〜7か月が目安です。
(出典:特許庁「商標審査着手状況(審査未着手案件)」
https://www.jpo.go.jp/system/trademark/shinsa/status/cyakusyu.html)
また、特許庁の統計では、商標の権利化までの平均期間は2023年で7.3か月となっています。
(出典:特許庁「特許行政年次報告書2024年版」1-1-84図
https://www.jpo.go.jp/resources/report/nenji/2024/document/graph/1-1-84.xlsx)
もっとも、これらはあくまで目安であり、出願状況や案件によって変動します。それでも、半年〜1年弱は見ておいた方がよいため、早めに動くに越したことはありません。模倣品が出始めてからでは遅いくらいです。
一つ補足すると、商標登録がない段階でも、ブランド名や表示が需要者の間で周知・著名になっている場合には、不正競争防止法上の保護によって対処できる余地があります。
(出典:不正競争防止法
https://laws.e-gov.go.jp/law/405AC0000000047)
ただし、周知性・著名性や混同のおそれなどの立証が必要で、商標権に比べるとハードルは高くなりやすいのが実情です。
備え2:税関で水際から止める
模倣品の多くは海外から流入します。財務省が公表した令和6年の実績データによると、税関は1日平均で90件・3,544点の知的財産侵害物品の輸入を差し止めています。
「輸入差止件数は、33,019件(前年比4.3%増)でした。輸入差止点数は、1,297,113点(前年比22.8%増)でした。」
出典:財務省「令和6年の税関における知的財産侵害物品の差止状況(詳細)」(https://www.mof.go.jp/policy/customs_tariff/trade/safe_society/chiteki/cy2024/20250307a.html)
差止め件数ベースでみると、この93.6%が商標権侵害物品です。関税法第69条の11は、商標権や意匠権などを侵害する物品を「輸入してはならない貨物」と定めています。
(出典:税関カスタムスアンサー「2001 輸入してはならない貨物とは」
https://www.customs.go.jp/tetsuzuki/c-answer/kinseihin/2001_jr.htm)
特に商標権者は、税関に「輸入差止申立て」を行うことで、この水際対策を利用できます。なお、制度上は商標権以外の知的財産権等に基づく申立てが可能な場合もあります。
税関の公式サイトによると、申立てに必要な書類は、申立書(税関様式)、登録原簿の謄本・公報、侵害の事実を疎明するための資料、識別ポイントに係る資料などです。提出先は、全国9税関の知的財産調査官です。
(出典:税関「差止申立ての一般的手順」
https://www.customs.go.jp/mizugiwa/chiteki/pages/b_003.htm)
税関への申立手続自体に手数料はありませんが、資料収集や専門家への依頼費用が別途かかることはあります。
フリマアプリ上でのモグラ叩きが「下流」での対処だとすれば、税関での差止めは「上流」で模倣品の流入自体を抑える仕組みです。令和6年末時点で税関が受理している輸入差止申立ては781件、うち商標権に基づくものが503件と最多で、実際に活用されている制度です。
備え3:モニタリング体制をつくる
商標登録を取得し、税関への申立ても行ったとしても、すべての模倣品を完全に防ぐのは現実的には難しいところがあります。プラットフォーム上の監視は、引き続き必要です。
ただし、毎日自分でメルカリやAmazonを巡回して模倣品を探し続けるのは、事業者にとってかなり重い負担です。模倣品の出品が継続的に発生する場合には、モニタリングや申告対応を、知財実務に通じた弁護士・弁理士等に外部委託することも選択肢になります。
自分が商品開発や販売に集中しながら、ブランドを守る体制を維持する、という考え方です。
今すぐ自分でやること、専門家に相談すること
今日できること
目の前の模倣品について、各プラットフォームの公式窓口から通報・申告してください。同時に、模倣品の出品URL・商品画像・商品説明・出品者情報のスクリーンショットを、できれば日付が分かる形で保存しておいてください。
この記録は、「いつからどのような侵害が発生していたか」を示す証拠として、後のプラットフォーム申告、警告書送付、税関申立て、交渉や訴訟対応などに役立ちます。
また、どの表示やパッケージ要素がどのように模倣されているかを整理する資料としても有用です。
専門家への相談を検討すべきタイミング
- 商標登録をまだ取得していない場合の出願手続き
- 税関への輸入差止申立ての準備
- 楽天が求める鑑定書の作成
- 模倣品が繰り返し出品され、自力での対応が追いつかなくなった段階
- 製造元・販売元に対する警告や差止請求を検討したい段階
このあたりが、「一人で抱え続けるより、専門家と一緒に動いたほうが結果的に早い」ラインです。
まとめ
模倣品を見つけたら、まず各プラットフォームの公式窓口から通報・申告してください。メルカリ・Amazon・楽天には、知的財産権侵害や模倣品の疑いがある出品に対応するための仕組みがあります。
ただし、1つ消してもまた出てくるのがこの問題の構造です。だからこそ、その場しのぎの通報だけで終わらせず、商標登録・税関対策・モニタリング体制まで含めて考えることが大切です。
商標登録を取得しておくと、プラットフォームでの申告が進めやすくなるだけでなく、税関での水際対策や、販売者への法的対応の土台にもなります。
次のアクションとして、まずはご自身のブランド名やロゴが商標登録済みかどうかを確認してみてください。J-PlatPat の「商標検索」から、無料で調べることができます。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/
出典一覧
- 消費者庁「コラムVol.7 インターネットでの化粧品の購入は慎重に─模倣品などの可能性も─」(2024年3月28日公表)
https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_safety/child/project_001/mail/20240328/ - 財務省「令和6年の税関における知的財産侵害物品の差止状況(詳細)」(2025年3月7日公表)
https://www.mof.go.jp/policy/customs_tariff/trade/safe_society/chiteki/cy2024/20250307a.html - 商標法(昭和三十四年法律第百二十七号)──e-Gov法令検索
https://laws.e-gov.go.jp/law/334AC0000000127 - 不正競争防止法(平成五年法律第四十七号)──e-Gov法令検索
https://laws.e-gov.go.jp/law/405AC0000000047 - 関税法第69条の11──税関カスタムスアンサー「2001 輸入してはならない貨物とは」
https://www.customs.go.jp/tetsuzuki/c-answer/kinseihin/2001_jr.htm - 税関「差止申立ての一般的手順」
https://www.customs.go.jp/mizugiwa/chiteki/pages/b_003.htm - 特許庁「商標審査着手状況(審査未着手案件)」(令和8年4月1日更新)
https://www.jpo.go.jp/system/trademark/shinsa/status/cyakusyu.html - 特許庁「特許行政年次報告書2024年版」1-1-84図
https://www.jpo.go.jp/resources/report/nenji/2024/document/graph/1-1-84.xlsx - メルカリヘルプセンター「禁止されている出品物・行為を通報する」
https://help.jp.mercari.com/guide/articles/830/ - メルカリ「知的財産権侵害の申立窓口(権利者保護プログラム加入者以外)」
https://about.mercari.com/contact/ipr-inquiry/ - メルカリ「権利者保護プログラム」
https://about.mercari.com/safety/ip-protection-program/ - Amazon.co.jp「知的財産権侵害についての申し立てとその手続き」
https://www.amazon.co.jp/gp/help/customer/display.html?nodeId=201995100 - Amazon「Amazon Brand Registry」
https://sell.amazon.co.jp/brand-registry - 楽天市場「権利侵害に関する通知」
https://ichiba-smp.faq.rakuten.net/detail/000011383 - 楽天市場「権利侵害通知窓口」
https://ichiba.faq.rakuten.net/form/rightsmanagement-post