Shopifyで化粧品の越境ECを始める前に。海外でブランド名が使えなくなるリスク

ヒスイです。

Shopifyで海外販売を有効にする。eBayに英語の商品名で出品する。Amazon.comへの展開を検討する。
J-Beautyや日本製コスメに海外から反応があると、「まずは小さく越境ECを始めてみよう」と思う場面があります。

ただ、販売国を追加する前に、3分だけ立ち止まって確認してほしいことがあります。

それは、その国で、自分のブランド名を本当に使えるかです。

日本で使っているブランド名でも、海外ではすでに別の人が同じ名前や似た名前を商標、つまりブランド名やロゴを守る権利として登録していることがあります。

そうなると、商品ページを作った後、広告を出した後、現地代理店と話が進んだ後に、ブランド名の変更や出品停止対応が必要になることがあります。

この記事では、化粧品の越境ECを始める前に確認したい海外商標リスクを、Shopify・eBay・Amazonなどの実際の販売場面に沿って整理します。

注意事項

この記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別案件についての法的判断ではありません。実際の出願・販売・契約判断は、必要に応じて専門家に確認してください。


目次

まず結論:販売国をONにする前に、ブランド名を検索する

越境ECを始める前に、最初にやることは大きく3つです。

越境EC開始前にやる3つのこと
  • 最初に売る国を3つまでに絞る
  • ブランド名・ロゴ・中国語名などの表記ゆれを洗い出す
  • その国で同じ名前や似た名前の商標がないか検索する

いきなり世界中で商標を取る必要はありません。
ただし、「どの国で売るか」を決めるなら、その国でブランド名が空いているかは先に確認した方が安全です。

特許庁は、海外での商標保護について次のように説明しています。

商標の保護は世界的に属地主義(その国の範囲内でのみ保護されること)が採用されております。海外で商標を保護するには、その国で商標登録をしなければなりません。

出典:特許庁「海外における商標の抜け駆け出願(冒認商標)対策」(jpo.go.jp

つまり、日本で商標登録していても、その権利が自動的に米国、中国、台湾、韓国、シンガポールなどに広がるわけではありません。

日本では自分のブランド名でも、海外では他人の登録商標になっている可能性があります。


Shopifyで販売国を追加する前に確認すること

Shopifyでは、海外販売を始めるための機能が整っています。Shopify公式ヘルプでは、Internationalについて次のように説明されています。

International is a cross-border management tool that helps you identify, set up, launch, optimize, and manage your international markets – all from a single store.

出典:Shopify Help Center「International sales tools」(help.shopify.com

つまり、Shopifyでは1つのストアから海外市場を設定・管理しやすくなっています。
これは越境ECを始める側にとって便利です。

ただし、販売国の設定が簡単になったからといって、その国でブランド名を自由に使えることまで保証されるわけではありません

たとえば、化粧品ブランド「LUMINA」という名前で日本国内販売をしているとします。Shopifyで米国向け販売を有効にした後、米国で同じ「LUMINA」が化粧品について商標登録されていた場合、商品ページ、広告、パッケージ表示が問題になる可能性があります。

Shopifyで確認したい順番は、次の通りです。

STEP
販売国を追加する前に立ち止まる

Shopify管理画面で販売国を追加する前に、その国でブランド名を使えるかをまず確認します。

STEP
その国の商標データベースで検索

米国ならUSPTO、中国ならCNIPA、グローバルにはWIPOなどで、ブランド名や類似名を検索します。

STEP
同じ・似た名前がなければ次の検討へ

同一・類似商標が見つからなければ、出願戦略や販売準備の検討に進みます。

STEP
似た名前があれば再検討

類似商標がある場合は、販売名・ロゴ・出願方針を見直し、必要なら専門家に相談します。

「海外発送できるか」と同じくらい、「海外でその名前を使えるか」も先に見ておくべき項目です。


eBayに出す前に確認すること:出品ページも商標問題になる

eBayに出品する場合、注意したいのは「商品が本物なら大丈夫」とは限らない点です。
商品そのものだけでなく、出品ページでのブランド名の使い方も問題になります。

eBay公式ポリシーでは、知的財産権について次のように明記されています。

We don’t allow products or listings that infringe the intellectual property rights owned by others including copyrights, trademarks, designs, patents, and utility models.

出典:eBay「Intellectual property policy」(ebay.com

つまり、他人の商標権などを侵害する商品や出品は、eBayでは認められていません。

さらに、eBayは商標についても次のように説明しています。

Using a trademark or geographical indication without the permission of the owner can infringe on their intellectual property rights and is strictly prohibited on eBay.

出典:eBay「Intellectual property policy」(ebay.com

つまり、現地で他人が登録している商標を、商品名・説明文・ストア名・画像内ロゴなどに使うと、出品に影響する可能性があります。

化粧品の場合、ブランド名は商品画像のボトルや箱にも入っています。
そのため、商品タイトルだけを変えれば済むとは限りません。

真正品でも問題になる使い方

真正なブランド品を販売する場合に、そのブランド名を適切に記載することが常に禁止されるわけではありません。問題になるのは、他人の商標を使って、非正規品を本物のように見せる、関係がないのに公式・正規代理店であるかのように見せる、検索誘導のために無関係なブランド名を入れる、といった使い方です。

自社ブランドの商品についても、販売国で同一・類似の商標が他人に登録されている場合は、商品名やロゴ表示が問題になる可能性があります。


Amazonでブランド展開する前に確認すること

Amazonで本格的にブランド展開する場合、商標はより実務的に関係します。

Amazon Brand Registryの公式ページでは、登録要件について次のように説明されています。

Trademark: Have a pending or registered trademark for your brand name or logo that’s issued by the designated government trademark office of a country with a corresponding Amazon store.

出典:Amazon「Amazon Brand Registry」(sell.amazon.com

つまり、AmazonでBrand Registryを利用するには、Amazonストアに対応する国の指定商標庁が発行した、ブランド名またはロゴの商標出願・登録が関係します。

Amazonは、Brand Registryについて次のようにも説明しています。

Amazon Brand Registry is a free program that helps you protect and grow your brand, even if you don’t sell in the Amazon store.

出典:Amazon「Amazon Brand Registry」(sell.amazon.com

これはつまり、商標は単に「他人に使われないようにする権利」だけでなく、モール上でブランドを管理するための前提にもなり得るということです。

なお、Amazon Brand Registry自体は単一のグローバルアカウントで運用できます。
ただし、複数国のAmazonストアで販売する場合、Amazonは販売する各国ストアに対応する商標を追加提出することを推奨しています。

将来的にAmazon.com、Amazon.sg、Amazon.com.auなどへ展開するなら、どの国・地域のAmazonで売るのか、その国でブランド名をどう守るのかを早めに整理しておく方がよいです。


中国向け販売では、英語名だけでなく中国語名も見る

中国向けにJ-Beautyを販売する場合は、特に注意が必要です。

JETRO北京事務所の資料では、中国の商標制度について次のように説明されています。

中国では、日本企業を含む、諸外国企業の商標について、権利者に先んじて冒認登録されてしまうケースが後を絶ちません。中国の商標出願制度も、先に出願した者に権利を付与する「先願主義」がベースとなっているからです。

出典:JETRO北京事務所「『攻め』と『守り』から考える商標出願」(jetro.go.jp

冒認登録、つまり本来のブランド側ではない第三者が先に商標を取ってしまうことが起きると、後から対応するのは簡単ではありません。

同じ資料では、冒認登録後の影響について次のように説明されています。

冒認出願であっても、中国で権利として登録されている以上、その登録の範囲内で中国で商標を使用すれば、日本の権利者企業も、商標権侵害の責任を問われかねません。

出典:JETRO北京事務所「『攻め』と『守り』から考える商標出願」(jetro.go.jp

つまり、「日本で先に使っていたから大丈夫」とは言い切れません。

さらに、中国向けでは、アルファベット名だけでなく中国語名も重要です。JETRO資料では、中国で採用される商標の例として、次のようなパターンが紹介されています。

漢字表記をそのまま、または、簡体字に変換したもの 例)「日立」→「日立」、「資生堂」→「资生堂」

出典:JETRO北京事務所「『攻め』と『守り』から考える商標出願」(jetro.go.jp

化粧品は、口コミやSNSで現地の呼び名が広がることがあります。
ブランド側が中国語名を決めていないと、ユーザーや販売先が勝手に呼び名を作り、その呼び名が先に商標出願されることも考えられます。

中国向けに動くなら、次の表記をセットで確認します。

  • 英語またはローマ字のブランド名
  • カタカナ、ひらがな、日本語由来の表記
  • 中国語名
  • 簡体字表記
  • 繁体字表記
  • 読みが近い表記

中国本土向けでは簡体字、台湾・香港向けでは繁体字の表記も確認対象になります。


海外から注文が入り始めたら確認すること

最初の1件、2件の海外注文はうれしいものです。
ただ、注文が入った国が見えてきたら、その国は商標確認の優先順位が上がります。

確認する順番は次の通りです。

STEP
注文・アクセスが多い国を確認する

Shopifyや各モールの管理画面で、注文・アクセスが集まっている国を把握します。

STEP
その国の商標データベースで検索

その国の商標データベースで、ブランド名と表記ゆれを検索します。

STEP
販売継続のリスクを確認

同じ・似た名前があれば、そのまま販売を続けるリスクを確認します。

STEP
出願を検討する

今後も継続的に売る国であれば、商標出願を検討します。

日本法を例にすると、商標権の効力について、商標法第25条は次のように定めています。

商標権者は、指定商品又は指定役務について登録商標の使用をする権利を専有する。

出典:e-Gov法令検索「商標法」第25条(laws.e-gov.go.jp

つまり、日本の商標法では、登録商標は、指定商品・指定役務、つまり登録時に指定した商品やサービスの範囲で使う権利を独占するものとされています。

海外でも、商標権は一般に、登録された商標と指定商品・指定役務の範囲を前提に効力が判断されます。ただし、具体的な保護範囲や侵害判断は国・地域ごとに異なるため、重要国では現地制度に即した確認が必要です。

化粧品であれば、多くの場合、第3類の「化粧品」などが中心になります。

ただし、ブランド展開によっては、サプリメントは第5類、化粧用具は第21類、小売サービスは第35類、美容サービスは第44類などが関係する場合があります。
実際にどの区分・指定商品を選ぶべきかは、販売する商品・サービスの内容によって変わります。


現地代理店から声がかかった時に確認すること

海外から代理店候補や卸先から連絡が来たときも、商標確認のタイミングです。

特に確認したいのは、次の3点です。

代理店との商標まわりの確認ポイント
  • その国で誰が商標を出願するのか
  • 商標の名義は誰にするのか
  • 契約終了後もブランド名を自社が使える設計になっているか

現地代理店が「こちらで商標を取っておきます」と言ってくれる場合があります。

一見ありがたい話ですが、商標の名義が代理店側になると、後で取引関係が変わったときに、ブランド側が自由に使えなくなる可能性があります。

基本的には、ブランド名はブランド側で管理する前提で考える方が安全です。
代理店に任せる場合でも、契約書で商標の帰属、使用範囲、契約終了時の扱いを確認しておきます。


自分でできる商標検索の手順

1. 販売予定国を3つまでに絞る

最初から全世界を見る必要はありません。

候補は、次の基準で絞ります。

  • 注文や問い合わせがある国
  • SNSで反応が多い国
  • 広告を出す予定の国
  • 代理店候補がいる国
  • 化粧品規制に対応できそうな国

2. 表記ゆれを洗い出す

検索する前に、ブランド名の候補を整理します。

  • アルファベット表記
  • カタカナ表記
  • ロゴ表記
  • 略称
  • スペースあり、なし
  • ハイフンあり、なし
  • 中国語名
  • 簡体字表記
  • 繁体字表記
  • 商品ライン名
  • シリーズ名

化粧品では、ブランド名だけでなく、シリーズ名が前面に出ることもあります。
たとえば「ブランド名」よりも「美容液ライン名」がSNSで有名になる場合、そのライン名も確認対象です。

3. WIPOや各国データベースで検索する

まず広く見るなら、WIPOのGlobal Brand Databaseが使えます。

WIPO公式ページでは、収録対象について次のように説明されています。

International trademarks under the Madrid System / Trademarks from participating national and regional offices

出典:WIPO「Global Brand Database」(wipo.int

ただし、WIPOも万能ではありません。WIPO自身も次のように案内しています。

Although the Global Brand Database covers a number of large trademark collections, it may be prudent to search also the registers of national/regional intellectual property offices.

出典:WIPO「Global Brand Database」(wipo.int

つまり、WIPOで検索しただけで安心せず、重要な国については各国・地域の商標データベースも見るべき、ということです。

たとえば中国については、中国国家知識産権局(CNIPA)の英語サイトのTrademarkセクションから、Trademark Searchの導線が用意されています(参考:CNIPA「Trademark」 english.cnipa.gov.cn)。

検索画面が使いにくい国もあるため、完全な判断が必要な場合は、海外商標に対応できる専門家へ相談するのが現実的です。


米国ではUSPTO検索だけでは足りない場合がある

米国向けに販売する場合は、少し注意が必要です。

米国では、連邦商標として登録されていない場合でも、実際の使用によって一定の商標権、いわゆるコモンロー上の権利が発生する場合があります。

USPTOは、USPTOの検索データベースについて次のように説明しています。

Results in the USPTO’s search database are limited to federal trademark applications and registrations and do not include the trademarks of other parties who may have trademark rights but no federal registration.

出典:USPTO「Why register your trademark?」(uspto.gov

つまり、USPTOで連邦商標を検索して同じ名前が見つからなかったとしても、未登録の商標権者がまったく存在しないとは限りません。

USPTOは、インターネット、州の商標データベース、事業者名データベースなども確認するよう案内しています。

米国向けに本格販売する場合は、次のような確認も検討します。

  • USPTOの連邦商標検索
  • 州商標データベース
  • 会社名、屋号、ドメイン名
  • Google検索
  • Amazon.com、eBay、Walmartなど主要モール内検索
  • Instagram、TikTokなどSNS上での使用状況

特に化粧品は、D2Cブランドやインディーズブランドが多く、先に市場で使われているブランド名がある場合もあります。
米国で広告やAmazon販売を本格化する前には、連邦登録だけでなく、実際の使用状況も見ておく方が安全です。


どこから専門家に相談すべきか

次のどれかに当てはまる場合は、自己判断だけで進めない方がよいです。

専門家相談を検討すべきケース
  • 同じ名前や似た名前の商標が見つかった
  • 中国、台湾、韓国、米国で本格販売する
  • AmazonやeBayで販売する
  • 現地代理店と契約する
  • 中国語名を作る
  • 海外向けパッケージを大量に作る
  • 海外広告を出す
  • ブランド名を変えにくい段階まで育っている

商標が似ているかどうかの判断である類否判断は、単なる完全一致検索では足りません。
見た目、読み方、意味、商品分野の近さを総合的に見る必要があります。

また、費用面が気になる場合は、公的支援制度も確認できます。
たとえば特許庁は、中小企業等の外国出願費用を支援する制度について案内しています。特許庁の案内では、外国出願にかかる費用の半額を助成する制度が紹介されています。

特許庁では、中小企業の戦略的な外国出願を促進するため、外国への事業展開等を計画している中小企業等に対して、外国出願にかかる費用の半額を助成しています。

出典:特許庁「外国出願に要する費用の半額を補助します」(jpo.go.jp

ただし、募集年度、対象要件、申請窓口、上限額は変わります。
利用を考える場合は、必ず最新年度の情報を確認してください。


よくある質問(FAQ)

日本で商標登録していれば、海外でも保護されますか?

いいえ。商標の保護は属地主義が原則で、日本の登録は基本的に日本国内でしか効力を持ちません。海外でブランド名を守りたい場合は、その国で別途出願・登録する必要があります。

最初から世界中で商標を取るべきですか?

多くの場合、その必要はありません。実際に売る予定がある国、注文やアクセスが集まっている国、代理店候補がいる国などに絞って優先順位をつける方が現実的です。

中国語名は自分で決めなくても、現地で自然に決まりませんか?

自然に呼び名が広がることはありますが、その呼び名を第三者が先に商標出願してしまうリスクがあります。中国向けに販売する可能性があるなら、ブランド側が中国語名・簡体字表記を主体的に決めて管理する方が安全です。

USPTOで検索して同じ名前がなければ、米国で安心して使えますか?

USPTOの検索結果は連邦商標の出願・登録に限られます。米国では未登録でも実際の使用に基づくコモンロー上の権利が発生する場合があるため、Google検索、SNS、主要モール、州商標DBなども含めて確認した方が安全です。

現地代理店に商標を取ってもらうのは便利ですか?

一見便利ですが、名義が代理店側になると、契約終了後にブランド側が自由に使えなくなるリスクがあります。商標の帰属・使用範囲・契約終了時の扱いを契約書で明確にしておくことが重要です。


まとめ

化粧品の越境ECでは、物流・関税・現地規制だけでなく、ブランド名の確認も重要です。

Shopifyで販売国を追加する前、eBayやAmazonに出す前、現地代理店と話す前に、販売予定国で商標検索をしておくと、後からの名称変更や出品停止リスクを減らせます。

今日からできる最初の一歩

最初に売る国を3つまでに絞り、ブランド名・ロゴ・中国語名を検索してみてください。

そして、同じ名前や似た名前が見つかった場合、米国・中国・台湾・韓国など重要国で本格販売する場合、代理店契約やAmazon展開が進む場合は、早めに専門家へ相談するのが安全です。


出典一覧

参考文献

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